七月八日のながれぼし
足元で渦を巻いている蚊取り線香の煙を、視線で追いかける。
もやもやと消える境目を見極めるように目を細めた。
隣ではマイペースに、ミツがお饅頭の包みをめくっている。
もぐもぐと口を動かす彼はどこを見つめているのかな。
「明日の七夕祭り、一緒に行くよね? 何時に迎えに行こうか?」
さも当然のごとく約束を交わそうとするミツの様子に、あたしの心はもやがかかる。
あっという間にかすんでいく。
「ミツはあたしとでいいの?」
「どうして?」
「だってあたしたち、もう17歳だよ。高校2年生なんだし、女の子に誘われない?」
年に1度、遊びに来るだけのあたしとは違う。
ミツにはここでの生活があって、関係がある。
こんなに優しい彼のことだから、きっと好意を向けられることも少なくないだろうに、あたしが独り占めするなんて許されないんじゃないだろうか。
あたしの予想をくすりと小さな笑みでかき消して、ミツはそんなのいいよ、言葉を転がす。
いつの間にかお饅頭を食べ終えた彼は、手の内に包みを潰した。
甘えるようにあたしの肩に彼の頭が乗せられて、ふんわりと柔らかな色素の薄い髪がくすぐったい。
「ナツの方が気心知れてるし。それに女子だけじゃなくて、学校の人たちに興味ないんだ」