七月八日のながれぼし
大丈夫だからと彼をなだめ、止めていた足を進める。
カランと音を立てる下駄。
白地に紫の縦縞模様と、百合の花が描かれた浴衣。
ミツがじっくりと眺めるから、あたしには大人っぽすぎるデザインだったかと不安になる。
「……そんなに見て、なに? 似合ってない?」
「ううん、逆だよ」
え? とミツの方を見上げると、彼はふにゃっと頰を緩めた。
その表情と、わずかに小首を傾げる仕草に胸がとくんと弾む。
「すごく綺麗だ」
さっきまで気づいていなかった視線の甘さを感じて、浴衣の下の肌が痺れるよう。
彼の顔を見ることなんてできなくて、あたしは俯いて自分の足元を見つめる。
「〜〜っ」
星の向こうに想い人がいるくせに、ミツはずるい。
どうせなにも考えていないんだろうけど、あたしはこんなことを言われたらどうしたってどきどきしてしまうのに。
なのに彼は、少しもそんな気持ちをわかってないんだ。
これがあいつだったなら、ミツと違って天然で鈍感なやつじゃないし、むかつくくらいかんたんに察してしまうんだろう。
いや、そもそもその前にこんな甘ったるいセリフを口にするわけがないか。
そう考えると、今どきどきしている自分の薄情さに顔が歪んでしまいそうになる。