七月八日のながれぼし




「そうだ、さっきみたいに子どもが走って来たら危ないから、手でも繋ごうか?」

「いや、勘弁して」



これ以上はキャパオーバーだ。

今でもほとんど隠せていないけど、平静を装うのができなくなるじゃない。



「昔と違ってあたしたちはもう高校生なんだから」



そう告げると、ミツは息をつめた。



「昔。……昔かぁ」



ハッと顔を上げる。

ついさっきも見上げた彼の表情は、あたしの言葉ひとつでずいぶんと雰囲気を変えてしまった。



ああ、やっちゃった。

いつもなら今みたいな言葉選びを間違えたりなんてしないのに。

浮かれちゃって、ばかみたい。



「ミツ、」



話す内容を決めないまま、衝動のままに彼の名前を呼んだ。

だけどそれに応えられることはない。



「あ、神社着いたよ。僕たちも短冊書こうか」



七夕祭りなだけあって、祭りで最も賑わっている神社には笹の葉が用意されている。

目的の場所に着いてしまい、ミツの予測できないタイミングでの言葉にあたしはただ頷くことしかできない。



手元を隠しながら、備えつけのペンで願いを書く。

ミツには見られないように笹の葉に吊るした願いは、とてもシンプルな想い。



〝会いたい〟



その気持ちはどこまでも、あたしの中の真実だ。

だけど、〝誰に〟会いたいのか。それを書くことはできなかった。






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