喫茶リリィで癒しの時間を。
 
 ちょっとだけ昼寝のつもりが、がっつり寝てしまっていた。しかも、寝顔をさゆりさんに見られてしまうなんて恥ずかしい。

 いびきや寝言を言っていたらどうしよう。穴があったら入りたい気分だ。


「俺、寝ているときうるさくなかったですか?」


「とても静かにすやすや眠っていましたよ。可愛いなって思って見てました」


「可愛いだなんて、やめてくださいよ」


「ごめんなさい。男の子はかっこいいって思われたいですよね」


「当然です!」と強い口調で言ったのと同時に、お腹からきゅるると情けない音が鳴った。


……恥ずかしい。寝顔を見られたうえに、腹の音まで聞かれてしまうだなんて。タイミングも悪いし、ほんと最悪。


「あら、お腹空いているんですか? もうこんな時間ですもんね」


「そうみたいです。さゆりさんは空いていないんですか?」


「私も空いてきました。そうだ、もしよかったら、近くのラーメン屋さんに行ってみませんか? 最近オープンしたんですよ。味噌ラーメンがおいしいと評判らしいんです。あっ、でもお家で――」


「――行きます。行かせてください」

 
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