喫茶リリィで癒しの時間を。
 
 二つ返事で答えると、さゆりさんは「でも、お家で夕食の準備が……」と心配しているようだった。たしかに、家ではもうご飯ができているだろう。


 でも、そんなの関係ない。さゆりさんと一緒に外食する絶好の機会を逃すはずがない。


「ラーメンだけだと絶対足らないんで、家でご飯も食べますから安心してください」


 本当に食べられるかは不安だけど、さゆりさんを安心させるために見栄をはった。


「そうなんですか、男の子はたくさん食べますもんね。じゃあ、お店を閉めてからいきましょうか」


「はい!」


 俺たちはもろもろの片付けを済ませた後、夜の商店街へと繰り出した。さゆりさんと肩を並べて歩くのは初めてで、心臓が口から飛び出しそうなほどドキドキした。

 いつか、当たり前に一緒に出掛けられるようになったら嬉しいな、とひそかに願う。
 


――それから一週間後、いつものように喫茶リリィでアルバイトをしていると、さゆりさんが普段見慣れない物を両手に抱えていた。


「どうしたんすか、これ。風船にテープに、折り紙みたいな紙もありますけど」


「明日、貸し切りでパーティーをすることになったので、店を飾りつけようかと思って買ってきました」


 
 
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