喫茶リリィで癒しの時間を。
 
「こういうのって、なんかいいですよね」

「こういうの、とは?」とさゆりさんが首をかしげる。


「商店街が一丸となって子供を楽しませようとしているじゃないですか。温かい大人が多いんでしょうね」


「そうですね、私が子供の時も、皆さんに優しくしていただきました。たまに叱られたこともあります。最近は、親以外の大人が子供を叱ることが少なくなりましたけど……私は、古い考えだと言われても、地域で子供を守っていくことが大切だと思います」


 さゆりさんの言うとおり、その考えは古いっていわれてしまうかもしれない。
 それに、子供たちからも鬱陶しがられるかもしれない。
 
 心を開くまえの実可子ちゃんがいい例だ。

 俺だって、喫茶リリィでアルバイトをしなかったら同じだったと思う。

 でも、俺はこの場所で、何人もの温かい大人と知り合うことができた。


 泣いている子供を放っておけない人、口うるさいけど物おじせず注意ができる人、大きな優しさで包み込むことができる人。自分の部下でもないのに、悩んでいる若手社員にアドバイスをする人。

 
 
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