喫茶リリィで癒しの時間を。
 
 和食が好きな鈴木のおっさんのために、さんまを使った料理なんかも考えていそうだ。

 キッチンで魚をさばくようになったら、とうとう喫茶店というくくりを超えてしまう気がする。まあそれも喫茶リリィらしくていいかもしれない。


 留守番中の俺は、お客さんがいない間にテーブルを拭いたり、インテリアの埃をとったりと掃除をはじめる。
 きれい好きなさゆりさんの影響なのか、時間があくと掃除をする癖がついてしまった。

 といいつつ、自分の部屋はかわらず散らかっているけど。さゆりさんが見たらドン引きするレベルだろう。


 ある程度掃除が終わったタイミングで、扉の開く音がした。まださゆりさんが帰ってくるには早いタイミングだから、お客さんがきたのだと推測する。

 営業スマイルを作って待っていると、やってきたのはIT系会社社長の竹内さんだった。


「いらっしゃいませ」

「やあ、アルバイトくん、こんにちは。……あれ? さゆりさんはいないのかい?」

「今は買い出しに出掛けていて、すぐに帰ってくると思いますよ」

「そうか。それでは彼女に会えるまで待っていることにするよ」


 
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