喫茶リリィで癒しの時間を。
竹内さんはカウンターの一番端の席に座り、いつものように長い足をくんでみせた。わざとなのか、無意識なのかはわからないし、別に興味もない。
「今日もアメリカンでいいっすか?」
「まさか、君、覚えてくれているのかい?」
竹内さんは目を丸くしていたけど、そこまで驚くことではないと思う。
毎回同じ注文していたらさすがに覚えるだろう。本当はさゆりさんだって覚えているけど、わざと知らないふりをしているんだ。
……本人はそれに気づいていないのか?
「ええ、まあ」
「そうか。君、なかなかやるようだね。身分不相応にもさゆりさんを狙っている小生意気なガキだと思っていたけど、違うようだ」
「ずいぶん失礼っすね」
「これはすまない。でも、さゆりさん狙いっていうのは合っているだろう? そうだ、せっかくだから君の名前を教えておくれよ」