喫茶リリィで癒しの時間を。
なぜか喧嘩腰な俺たち。
いちいち挑発的なことを言われてムカつくけど、ちょっとだけ楽しい気もする。これがライバルってやつなのか。
よし、ここはあっと驚かせたいから、少しだけ話を盛ってやろう。
「あれは、一年前の夏のことでした――」
すっかり見慣れた天井を見上げながら回想に入ろうとしたとき、タイミング悪くドアのベルが鳴った。
もしかして、さゆりさんが帰ってきたのか?
だとすれば、もう竹内さんとは話せないな。……とすこし残念に思いながら入り口に目をやると、そこには初めてみる顔があった。
「いらっしゃいませ。おひとり様でしょうか?」
「はい」
「それでは、こちらのカウンター席にどうぞ」
店にやってきたのは、鈴木のおっさんたちと同じ年齢くらいの男性だった。身長は俺と同じくらいで、すらっとした体型。
ジャケットを羽織っていてこぎれいな感じ。とくに優しげな目が印象的な人だと思った。