喫茶リリィで癒しの時間を。
 
「ええ。もう三十年くらい前になるかな、この近くに住んでいたことがありましてね。当時、この喫茶店で働いていた女性にはお世話になったので、久しぶりに顔を見に来たのです」


 この人の話を聞いて真っ先に浮かんだのは、さゆりさんの母・百合子さんのことだった。

 ジジイトリオみんなが夢中になっていた女性だから、遠方から会いにくる男性がいてもおかしくないと思う。

 でも、他に俺みたいなアルバイト店員がいたかもしれないし、もしかしたらさゆりさんのおばあちゃんのことかもしれない。

 
 どこまで踏み込んでいいのかわからないけど、俺が知っているのは百合子さんだけだから、名前を出して聞いてみることにした。


「ブレンドコーヒーお待たせいたしました」

「どうも。とてもいい香りですね」

「ありがとうございます。つかぬことをお聞きしますが、その女性のお名前って……百合子さんですか?」


 

 
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