喫茶リリィで癒しの時間を。
「君、彼女を知っているのかい!?」
百合子さんの名前を出したとたんにお客さんの顔色が変わった。本当に、百合子さんのことだったんだ。
「いえ、名前だけですが……」
「そうか、でも、嬉しいよ。名前だけでも知っている人と出会えてたからね。ちなみに、今もこのあたりに住んでいるのかとか、何か情報知りませんか?」
「えっと……」
はるばる会いに来た人はもうこの世にいません、だなんて、地の底に落とすようなことを言わないといけないのか。
非常に言いにくいけど、でも、俺も名前を聞いてしまった以上、事実を伝える責任があると思った。
「……百合子さんは、二年くらい前に亡くなったと聞いています。俺も詳しいことは知らないのですが」
淡々と事実を伝えたと同時に、カシャンという嫌な音が店内に響いた。お客さんの手からコーヒーカップが滑り落ちていた。