喫茶リリィで癒しの時間を。
でも、彼は帰りたいと言っているし、引き留めるのも微妙だよな。
どうするべきか迷ったけど、結局俺は、寂し気な背中をただ見つめることしかできなかった。
彼が外に出ようとドアノブに手を触れようとしたとき、タイミング悪く外側からドアが開いた。
「おお、びっくりした」
やってきたのは、いつものジジイ三人衆。そういえば、そろそろ三人が来る頃だった。
まず店に入ってきたのは鈴木のおっさんで、おっさんが開けたドアにお客さんがぶつかりそうになった。
「すまんかったな」
「いえ……」
鈴木のおっさんはお客さんに軽く謝ると、お客さんも軽く会釈をして店を後にした。
ジジイトリオはいつものテーブル席に向かう。
「ねえ、さっきの人……どこかで見たことある気がしない?」
椅子に座りながら、溝口さんが二人に問いかけた。
「ワシもそう思っとった。なんていうか、とてつもなく腹立つ顔をしとったな」
「私もです。嫌いな人に似ているような、でもその人が誰だか思いつかないですねえ」
「みんなが、嫌いな人に似ているって……?」