喫茶リリィで癒しの時間を。
「なんだその話し方は! 気持ちが悪いのう!」
「ジロちゃん、落ち着いて。冬馬くんが悪い子だったら、さゆりちゃんがすぐに追い出してると思うよ」
穏やかな溝口さんにたしなめられ、鈴木のおっさんは気まずそうな顔で水を飲んでいた。
「まあ、それだけさゆりちゃんが魅力的だという証拠でしょう。冬馬くんのような年下の男性にさえも愛されてしまうのですから」
「あ、愛って! 俺はそんな……」
ダンディーな石川さんの口からとんでもない言葉が飛び出してきて、焦ってトレイを落としそうになった。コップをテーブルに置いた後でよかったと思う。
「こんな小僧にさゆりちゃんは任せられんわ。まだ竹内のほうが似合っとる」
「そんなん、ただ社会人ってだけじゃないすか。俺だって、あと十年経てば立派に働いてるし!」
溝口さんたちが間に入ってくれても、俺と鈴木のおっさんの口論は止まらない。
――止められるのはさゆりさんと、彼女の淹れるコーヒーの香りだけだ。