喫茶リリィで癒しの時間を。
 
「えっ……」


 お客さんと顔を合わせた瞬間、さゆりさんの手から買い物袋がするりと落ちた。かぼちゃやサツマイモが床に転がっていく。


「ちょっと、大丈夫ですか? さゆ――」

「――百合子?」


 お客さんは、さゆりさんを見てひどく驚いているようだった。


「私は幻を見ているのか? いや、でも……」と、混乱している様子。


 それほどまでに、さゆりさんと百合子さんは似ているらしい。それより、お客さんは百合子さんを呼び捨てにしてた。やっぱり、二人は……。


「私は、宮野百合子の娘です」

「娘……?」

「そして、多分、ですけど……あなたの娘、だと思います」

「わたし、の?」


 
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