喫茶リリィで癒しの時間を。
「竹内さん、せっかくお越しいただいたのに……ごめんなさい」
珍しくさゆりさんが、竹内さんに素直に接している。
「いえ、私はあなたを一目見れただけで十分ですから。……では、またきます」
竹内さんはウィンクをしてみせると、颯爽と店から去っていった。
ウィンクは完全に余計だろう。イラッとする。
「……ワシらも帰るか」
「えっ、おっさんたちも帰っちゃうの?」
「ここは親子水入らずで話すべきだろう。それに、こいつの顔を見ていると、殴りたくて仕方なくなるんじゃ」
「おっさん……」
ぶつぶつと文句を言いながら、鈴木のおっさんも店を出て行った。
「僕らも帰るね」
「また来ます」
溝口さんと石川さんもおっさんに続いた。
さゆりさんのお父さんは居心地が悪そうに店の端っこに立っていた。
さゆりさんは切なげに店のドアを見つめている。
ジジイトリオにとってさゆりさんのお父さんは、マドンナを奪って苦労人にさせた存在で、許せないのだろう。
さゆりさんが会いたがっていたと知っていても、感情を隠せないのは、百合子さん親子を大切に思っているからこその気持ちだと思う。