喫茶リリィで癒しの時間を。
 
 かつて好きだった人が亡くなっていて、次に彼女と瓜二つの女性が目の前に現れて、なんと彼女は自分の娘だっただなんて展開、ドラマでもなかなかなさそうだもん。


「お母さんは、もう一度お父さんに会いたかったのだと思います。このお店をずっと続けていたのは、お父さんと出会った場所だったから。お父さんがもう一度訪ねてくれるんじゃないかと願っていたからです」


「そうか。彼女は離れていても、私のことを想ってくれていたんだね。私がもっと早く、勇気を出していれば会えたのに……。本当に、後悔することばかりだな」


 お父さんは目頭を押さえながら、絞り出すように声を出した。


「少しだけ、昔話をしてもいいだろうか」

「……はい」


 お父さんは一拍置いてから、百合子さんとの出会いと、別れたいきさつについて語り始めた。


「私は仕事の都合でこの土地に引っ越してきて、何気なくこのお店に入って、百合子と出会いました。彼女は美しくて明るくて、気立てのよい女性で、恋に落ちるのに時間はかからなかった。告白してOKをもらったときは年甲斐もなく跳び跳ねてしまうほど嬉しかったです」


 

 

 
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