喫茶リリィで癒しの時間を。
さゆりさんのお父さんは、一度は別の人との人生を歩んだけれど、心の片隅で彼女を想い続けていた。
どちらかが相手に合わせていたら、もっと早く再会していれば、三人は幸せに暮らせたのかもしれない。
そう考えると歯がゆくて、やるせなくなった。
第三者の俺がこんな気持ちになるのだろう、お父さんとさゆりさんはもっと辛いと思う。
「さゆりさん、私のせいでいろいろと苦労をかけて、申し訳なかったね。片親の家庭で育って、大変なことも多かったでしょう?」
「いえ、私は……私とお母さんは、お父さんが考えているよりもずっと幸せでしたよ。今は田舎で老後生活を送っていますけど、子供の時は祖父母と一緒に暮らしていましたし、商店街の皆さんが支えてくださいました。さっきお店にいたお三方も、本当の娘のようにきにかけてくださいました」
「あの三人は、百合子の幼馴染みですよね。お互い歳をとったし、数十年ぶりだったので最初はわからなかったですけど。私をにらむあの顔で思い出しました」