喫茶リリィで癒しの時間を。
さゆりさんのお父さんは苦笑いを浮かべた。
ジジィトリオ、とくに鈴木のおっさんは、彼に嫌悪感むき出しだったんだろうな。顔を合わせるたびに喧嘩をふっかけていたりして。
「ふふ、昔からそうだったんですね。あのお三方は、私に父親がいなくても寂しくないようにって、常に考えてくださいました。小学校の時に、三人で父親参観日に来てくれたこともあります。それぞれ家庭をお持ちなのに」
さゆりさんはおかしそうに笑う。ジジィトリオが参観日に来た日のことを思い出しているのかな。
鈴木のおっさんは、授業中もうるさくしていそうだ。
「そうか、あの三人には頭が上がらないな。……これからは、私も負けていられないですね」
「えっ?」
「突然のことでまだ実感がわかないけれど……少しずつでもいいので、空白の時間を埋められたらいいなと思います。もし君が私を父親として受け入れてくれるのであれば、の話だけれど……」
お父さんは優しく微笑むと、さゆりさんの手にその手を重ねた。
さゆりさんの手を包み込むその手はしわだらけで、でも、とっても大きい。