喫茶リリィで癒しの時間を。
 
「え、いいの?」

「あまりもんじゃ」


 なぜかおっさんは、追加でポテトコロッケもくれた。両手にコロッケをもっている俺、すごく食いしん坊みたい。


 鈴木のおっさんは口が悪くて、頑固で、顔が怖いけど、悪い人ではないんだよな。
 いつも自分の気持ちを正直に伝えてくれるし。
 まぁ、めんどくさい人だと思う時が圧倒的に多いけど。

 少なくともさゆりさんにとっては、大切な“父親”の一人だ。


「どっちもおいしいよ。ありがとう、おっさん」

「おう。いつまでも店の前におられたらじゃまだ。もう帰れ」

 虫を追い払うようなしぐさをされ、イラッとした。コロッケほめてやるんじゃなかった。



「言われなくても帰るっつーの。じゃあ、また明日な」

「また明日、か。それも、いつまであるかな……」


 言われたとおりに帰ろうとしたけれど、おっさんの意味深な発言が気になって足を止めた。

 いつも変わらない仏頂面だけど、今はどことなく寂しそうな目をしている。








 
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