喫茶リリィで癒しの時間を。
 
「おっさん、それって、どういう意味だよ」

「前に八百屋がいっとったろ。さゆりちゃんは、父親に会うためにあの喫茶店を続けているってな。目的は達成したんだ、いつ店を畳むかもわからん」

「えっ……」

「それにな、せっかく念願の父親と再会できたんだ、ゆくゆくは一緒に住みたいと思うだろ。さゆりちゃんがここを離れて、あいつのもとに引っ越していく可能性もある」


 トンカチで頭を叩かれたような、強い衝撃が走る。


 そんなこと考えてもいなかったけど、たしかに、おっさんの言うことは一理ある。


 百合子さん、さゆりさんがあの店を続けていたのは、お父さんに会うためだ。
 目的を果たしたいま、赤字続きの店を続ける必要はないだろう。


 それに、さゆりさんのご両親は転勤が原因で別れていて、互いに辛い経験をしている。

 すべてを知ったさゆりさんは、もう後悔させないように、この土地を捨ててでも父親と一緒に暮らそうとするかもしれない。


 そうなったら、俺は……さゆりさんとはもう会えなくなる?


 
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