喫茶リリィで癒しの時間を。
 
 人に教えられるほど成績がいいかと言われたら、微妙なところだけど、簡単な英会話くらいなら大丈夫だと思う。……一応、基本的なところから勉強し直してみよう。


「私は、そうですね、字がきれいになりたいので習字を習いたいです」

「いいっすね! 俺もうまくなりたいっす」


 溝口さんも石川さんも、もう結構な歳なのに、向上力があってすごいなと思う。

 俺なんか、授業中はほぼ寝ているというのに。唯一自慢できるのは、アルバイトを一生懸命頑張っていることくらいだ。


「みなさん、やりたいことがあって素晴らしいですね! ちなみに鈴木さんは何かおありですか?」

 さゆりさんが鈴木のおっさんに話を振った。
 おっさんは“待ってました”といわんばかりのドヤ顔をして、


「ワシは、吹き矢を勉強したいとおもっとる」と言い切った。


 おっさん以外の全員が面食らったような顔をしている。
 予想の斜め上を行くような答えに、誰も言葉が出ないようだった。


 
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