喫茶リリィで癒しの時間を。

「椿さんってタバコ吸うんすね」


「ああ。主に会社で休憩中にな」


 椿さんのプチ情報を知ったところで、コーヒーができあがった。


「どうぞ召し上がってください」


「一つ言っておくが、俺はコーヒーの味にもうるさい男だ。覚悟しておくように」


 どんな評価が下されるのかと考えるだけで緊張してきた。お腹も痛くなる。
 俺はただ、唐揚げだけでさゆりさんを判断してほしくなかった。
 
 喫茶店店主としてのさゆりさんはすごいんだぞ、彼女の淹れるコーヒーは最高なんだぞって、椿さんに言いたかった。

 でも、もしまた椿さんに酷評されたらどうしよう。
 さゆりさんのプライドがずたずたになっちゃうんじゃ。

 
 そう考えると怖くて、椿さんがコーヒーを飲む様子を見ていられなかった。



「……うまい。最高じゃないか!」



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