喫茶リリィで癒しの時間を。

「えっ?」


「酸味がなくて飲みやすいと思いきや、深いコクがあって飲む人を飽きさせない。こんなにうまいコーヒーは生まれて初めてだよ」


 嬉しそうに笑う椿さんは、なぜか少年のように見えた。
 怖そうに見えるけど、実は普通の人なのかもしれない。


「さゆりちゃんのコーヒーがうまいということは、商店街では常識だぞ」


「そうそう、コロッケ屋の鈴木さんとか毎日通ってるらしいよねえ」


 かしわぎのご夫婦の言葉を聞いて、さらに嬉しくなる。
 やっぱり、さゆりさんのコーヒーは評判がいいんだ。俺も、彼女の人気を落とさないように、一杯一杯丁寧に淹れないといけないな。


「今度からは、かしわぎでご飯を食べたあとに、喫茶リリィで食後のコーヒーを頂くことにしよう」


「わあ、嬉しいです。ありがとうございます」


 さゆりさんは元気を取り戻したようで、いつものように穏やかに笑っている。
 椿さんに認めてもらうことができて本当によかった。



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