喫茶リリィで癒しの時間を。


 それから俺たちは、コーヒーを飲みながら他愛もない話をして過ごした。
 
 一番驚いた話は、椿さんがこの商店街の救世主だったということだ。
 俺は全然知らなかったけど、わるい不動産屋によって商店街がつぶされそうになっていたらしい。
 
 騙されて借金を背負わされ、追い立てられていた店もあったとか。
 定食屋かしわぎも被害者の一人だったらしい。



「隆弘くんが弁護士を紹介してくれて、さらに商店街のPRにも力を入れてくれてねえ、この人は本当にすごい人なんだよ」


「人として当然のことをしたまでだよ」

 
 もっとひけらかしてもいいくらいの功績なのに、謙遜する椿さんがかっこよく見えた。


「椿さんって、とっても素敵で素晴らしい方なんですね。尊敬します」


……彼をかっこいいと思ったのは、俺だけではなかったらしい。
 珍しくさゆりさんが、男の人を褒めている。キラキラした目で椿さんを見つめている。


 もしかして、俺、余計なことをしてしまったかもしれない。

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