喫茶リリィで癒しの時間を。

 
「宇垣くんは、本当にわかりやすい少年だな」


「どういう意味っすか?」


「安心してくれ。君の大切なお姫様を奪ったりしないから」


「おおお、お姫様って!」


 突然飛び出してきたキザな台詞に耳まで赤くなる。
 そして、俺の気持ちが椿さんにバレていたということも恥ずかしい。


 思い返してみると、椿さんだけでなく、いろんな人にバレているような気がする。
 俺って、わかりやすいタイプなのだろうか。


「俺には可愛い婚約者がいるんだ。今度喫茶リリィに連れてくるよ」


「そうなんですか。……でも、椿さんがそうでも、さゆりさんの気持ちはわからないでしょ?」


「それはその通りだ。だが、男だったら嘆く前に“好きな女を振り向かせてやる”と奮起すべきじゃないか?」

 
< 171 / 176 >

この作品をシェア

pagetop