喫茶リリィで癒しの時間を。
「世間ではクールビズが推進されていますが、やはり営業はスーツってイメージがあるので、真夏の昼間でも着ないといけないんですよ」
「大変ですねえ。って、そうだ、今お昼ですよね? 昼食はもうお済みですか?」
「いえ、まだです」
「それじゃあ、コーヒーの前にまずは腹ごしらえですね」
「……えっ?」
ぽかんとするお客さんをよそに、さゆりさんは一人で話を進めていく。
なぜかるんるんと楽しそうだ。
「何がいいですかね? メニューにあるものでも、ないものでも大丈夫ですよ? 材料によっては作れないものもありますけど」
「あの、ええと、さすがにご飯までご馳走になるのは、気が引けるというか……」
たしかにそうだ。俺も、頼んでもいないショートケーキを出されたときは戸惑ったしな。
親切にされて嬉しいのは事実だけれど、初対面の人にいきなり優しくされると、素直に受け取れないかもしれない。
「気になさらないでください。次お越しいただいたときに、たくさん注文していただければいいんですから」