喫茶リリィで癒しの時間を。
「いらっしゃいませー」
ドア上部についたベルが鳴ったと同時に、おっとりとした口調で挨拶をされた。可愛い声の主は、右側にあるカウンターから笑顔で俺のほうを向いている。
ブラウン色の長い髪は横にまとめてあり、ラフな格好の上に深緑のエプロンを付けている。大きくてたれ目の瞳に、色っぽい唇が特徴的な美人だ。
こんなにきれいな人に出迎えられるとは思ってもみなくて、入り口から動けなくなってしまった。
「テーブル席はあいにく埋まっているので、カウンター席でもよろしいですか?」
「あっ、はい、だいじょぶです……」
「では、お好きな席にどうぞ」
両足に力を入れて、なんとかカウンター席までこぎつけた。カウンターには謎の器具が四つ置かれていて、奥の棚にはコーヒーカップやお皿が整然と並んでいる。
どこに座ったらいいか迷ったけど、お姉さんの目の前の席にした。