喫茶リリィで癒しの時間を。
2.いじめっ子といじめられっ子。
■ダンディおじさんと少女。
八月下旬、夏休み終了へのカウントダウンが始まったころ。
俺の一日は、いつもと変わらずジジイトリオとの世間話から始まっていた。
「あれ? 冬馬くん、今日は制服なんですねぇ」
「はい、今日は高校の登校日なんすよ」
俺なんかの些細な変化に気がつくなんて、さすがは商店街随一のダンディ石川さんだ。
結構なオジサンなのに女性にモテているのも納得である。
「それなら、アルバイトなんてしとらんと、さっさと学校に行け」
俺の顔を見るなり憎まれ口をたたく鈴木のおっさんは、石川さんの爪の垢を煎じて飲んでほしい。
「登校日は午後からなんだよ。めんどくさいから行きたくないんだけどなぁ……」
「親御さんに怒られて、しぶしぶ行くことにしたのかい?」
「溝口さん、それが違うんすよ。友達に“サボるなんてありえない”って怒られて……真面目かっつーの」