喫茶リリィで癒しの時間を。
 
「喧嘩できる友達がいるだけいいってことだ。世の中には、いじめで苦しんでる子供がたくさんおるっていうのに」


「おっさん、話飛躍しすぎだろ。急にいじめの話されたって困るんだよ」


 今日も飽きずに鈴木のおっさんとの口論が始まる。いつもなら、優しい溝口さんや紳士的な石川さんが鈴木のおっさんとなだめてくれるけど、今日は違った。


「たしかに、最近よくいじめが問題で自殺しちゃったってニュースを見るよねえ」と溝口さん。


「そうですね。商店街近くの学校でもいじめが起きているかもしれませんし、決して他人事ではありません」と石川さんは言う。


「ワシは学校だけに任せるべきではないと思う。もっと商店街全体で目を光らせ、子供たちを守ってやらんといかん」


 鈴木のおっさんの意見に、他のジジイたちも深くうなずいていた。
 その一方で俺は少ししらけ気味。


 商店街全体で子供たちを守るって、いったいどうやるんだ? 当事者の親ならまだしも、何の関係もない大人が子供の世界に割り込んで、解決なんてできるのだろうか。


 いろいろ疑問に思うこともあったけど、面倒くさいから口には出さなかった。


 
 
 
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