喫茶リリィで癒しの時間を。
 
 休憩室に学校用カバンを置き、制服の上から深緑のエプロンを身に着けて店内に戻った。

 ちょうどそのタイミングで、来客を知らせるドアベルが鳴った。


 姿を見せたのは石川さんと……まだ小学生くらいの女の子の二人だった。

 女の子の髪は長くて、パーマをかけているのかややウェーブがかっている。目がくりっとしていてお人形のようで、白いワンピースとサンダルがよく似合っている。

 おそらく男子にモテるであろう、女の子らしくてとても可愛い子だ。


「いらっしゃいませ!……って、あら? そちらのお嬢様は、親戚の方でしょうか?」


「いえ、違います。たまたま店の前を歩いていたので、声をかけて連れてきました」


「えっ? それって……」


“誘拐じゃないですか”と叫びそうになったけど、女の子が涙をぬぐっていることに気づいたのでやめた。


 泣いている子供を放っておけなくて、声をかけてここまで連れてきたのかと推測する。


「可愛いお客さんは大歓迎ですよ。よろしければこちらに座ってください。石川さんもどうぞ」


 さゆりさんは、石川さんと女の子にカウンター席をすすめた。

 

 
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