喫茶リリィで癒しの時間を。
 
「よろしければこれをどうぞ」


  少女に出されたのはラムネだった。水色の瓶が爽やかで、今の季節にぴったりだと思う。

 この時期に、たまにコンビニなどで見かけるけれど、飲み方がわからなくて買ったことはない。
 たしか、ビー玉で栓をしているんだっけ?


「……どうやって飲むの?」


 女の子が初めてしゃべった。ラムネに興味を持ったのだろうか。
 そして彼女も俺と同様、飲み方がわからないらしい。


「私も、あんまり自信がないんです。石川さん、ご教授いただいてもよろしいでしょうか?」


「お任せください。……その前にお嬢さん、これで涙を拭いてくださいね」


 石川さんは、女の子にチェック柄のハンカチを渡した。
 

「ありがとう」


 女の子はすぐに、ハンカチで涙をぬぐった。


「ラムネはまずふたのフィルムをとり、付属の“玉押し”を使ってビー玉を落とすんですよ」


 石川さんは“玉押し”というプラスチックの部品を飲み口部分に押し当てた。 


「このまま下に押せば、飲めるようになります。やってみますか?」


「……うん!」

 

  
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