喫茶リリィで癒しの時間を。
 
 女の子が習った通りにやってみると、栓をしていたビー玉がコロンと落ちた。
 同時に小さなたくさんの泡がのぼっていく様子はどこか幻想的にみえる。


「このくぼみ部分を下にして持つと、うまく飲むことができるんですよ」


 石川さん曰く、瓶上部のくぼみはビー玉をひっかける役割をしていて、飲み口をふさがない工夫がされているらしい。
 昔の人々の知恵ってすごいな。


 女の子は両手で瓶をもつと、ごくごくと勢いよく飲んだ。


「おいしい!」


 いつの間にか涙は乾いていて、女の子は向日葵のように明るく笑っていた。 

 さゆりさんの癒しオーラのおかげか、石川さんの紳士的なふるまいがよかったのか、はたまたラムネという飲み物が新鮮だったからなのか。

 勝因がどれなのかはわからないけれど、純粋に大人ってスゲーと思った。
 俺一人だったら、絶対にできなかったと思う。


「気に入ってもらえてよかったです。あっ、自己紹介がまだでしたね。私はさゆりと言います。そして、こちらは和菓子屋の石川さんです。よろしければ、お名前を教えてもらえませんか?」


 
 
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