喫茶リリィで癒しの時間を。
「そのお店っていうのは、何を売っている店なんですか?」
さゆりさんの踏み込んだ質問に、あいちゃんはまた黙り込んでしまった。答えてしまったら、いじめている子の正体がわかってしまうと思ったのだろう。
「それは……いえないよ」案の定、あいちゃんは答えようとしない。
「大丈夫、ここにいる人たちはみんな、あいちゃんの味方ですよ。だから安心して、全部話してみて?」
あいちゃんは、店内を一周ぐるっと見渡した。石川さんは笑顔で頷き、鈴木のおっさんは「ワシらが力になるぞ」と力強く話し、溝口さんは「大丈夫だよ」と励ます。
もちろん俺も、みんなに同調するようにうなずいた。
「…………その子の家は、八百屋さんなの」
「この商店街にある八百屋さんですか?」
「うん」
商店街にある八百屋は、何度かお使いで利用したことがある。恰幅がよくていつも元気なおばちゃんがいたけど、あの人の娘があいちゃんをいじめているのだろうか。
「……そうでしたか。その八百屋の子とは、何かトラブルがあったのですか?」
「ううん、一度もケンカしたことないよ。あいに悪いところがあれば直すのに……」
「自分を責めないで。あいちゃんは何も悪くありません。どんな事情があったって、意地悪をする方がいけないんですよ」