喫茶リリィで癒しの時間を。
 
 俺が知らないだけで、見えないところでいじめは続いていたかもしれない。意地悪をされなくなっても、あの子の中学生活は楽しくないままだったと思う。


 そう考えると、結局、大人が介入したところでなにも解決しないかもしれない。
 家族でも担任でもない大人がかかわったところで、何の効果も得られない気がする。

 過去を振り返って導きだした俺の答えは、これだった。


「水を差すようで申し訳ないですけど、子供の問題に大人が口を挟むと余計にもめるんじゃないですか? 八百屋に事情を話したら〝親にチクったでしょ”ってあいちゃんが責められると思います」


「その辺は、八百屋がうまくやるだろ。商店街の人間に悪いやつはいないからな!」


「なんすか、その異常な仲間意識……」


 鈴木のおっさんの根拠のない自信はどこからやってくるのだろう。こういうタイプが一番問題をこじらせそうだ。


「たしかに白井さんご夫婦は優しくて心が広い方なので、話を聞いてくださると思います。なにより、娘の実可子(みかこ)ちゃんは素直で明るいいい子なんです。私は今でも、実可子ちゃんがいじめをしているだなんて信じられなくて……」


 

 
< 67 / 176 >

この作品をシェア

pagetop