喫茶リリィで癒しの時間を。
さゆりさんがお客さんと肩を並べて座るなんて珍しい。今日はクローズにしているからだろうか?
「冬馬くんも楽にしていてくださいね。何か食べてもらってかまわないですよ」
「ありがとうございます」
そう言われても、どうしていればいんだろう。サイフォンの練習をする? 休憩室でご飯を食べておく? それとも、二人のそばにいて話を聞くべきか?
選択肢が多くて迷ったけど、最終的にさゆりさんの隣に座ることに決めた。
俺だって喫茶リリィの一員だし、あいちゃんの話を直接聞いたんだ。この問題はもう他人事じゃない。
「さゆりちゃん、あたしはね、うちの子がいじめをしているなんてどうしても信じられないんだ。だからつい鈴木さんに怒鳴っちゃってねえ。あの人がウソをつくような人間じゃないってわかってはいるんだけどね」
「お気持ち、お察しします。私も、実可子ちゃんが人を傷つけるようなことをするなんて信じられないんです」
「ありがとう。さゆりちゃんは優しいね。……若い頃の百合子(ゆりこ)にそっくりだよ」
「ふふ、最高の誉め言葉です」