喫茶リリィで癒しの時間を。
百合子という名前は初めて聞くけれど、どんな人物なのかはなんとなく想像できた。
きっと、さゆりさんのお母さんなのだろう。そっくりだと言っていたし。
八百屋のおばさんは、百合子と呼び捨てにしているあたり、さゆりさんのお母さんとは友達だったのだろうか。
「さゆりちゃんがこのお店を継いでくれて、百合子もだろうけど、あたしも嬉しかったよ。このお店はあの子の形見みたいなもんだしね。それにさ…………いや、やっぱやめとくよ」
おばさんは途中で話すのをやめて、何かをごまかすかのようにコーラを一気飲みした。
一体何を言おうとしたのか気になるけど、俺なんかが聞いていい話ではなさそうな気がする。
「あー、この鼻にくるかんじ、たまんないねえ」
これ以降、百合子さんの話が出ることはなく、他愛もない話をして時間を過ごした。
――あっという間に時はすぎ、実可子ちゃんと約束している時間が近づいてきた。
「では、そろそろ私は実可子ちゃんをお迎えに行きますね。白井さん、狭いところで恐縮ですが、休憩室に移動していただけますか?」