喫茶リリィで癒しの時間を。
「実可子ちゃんチーズケーキ好きだったよね、食べる?」
「食べたい!」
「飲み物はオレンジジュースでいいかな?」
「うん、ありがとう。さゆりお姉ちゃん大好き!」
“さゆりお姉ちゃん”
なんて素敵な響きなのだろう。いいなあ、俺もお姉ちゃんって呼んでみたい。
弟みたいって言ってもらえたし、いつかチャレンジしてもいいかも。
実可子ちゃんをうらやましく感じたのは、呼び方だけではない。さゆりさんは、彼女の好みを知り尽くしている。それだけ二人は仲がいいということだ。
俺もさゆりさんに、好きな食べ物とか把握してもらいたいなあ。
さらに、素直に“大好き”と伝えられるのもうらやましい。
実可子ちゃんになりたいとさえ思ってしまう。
「はい、どうぞ」
「いただきます!……相変わらず、さゆりお姉ちゃんのチーズケーキはおいしいなあ。まさか、このケーキのためにわたしを呼んだの?」
「……うん、そうだよ。それに、最近実可子ちゃんと遊べていなかったから、ゆっくりお話がしたいと思ったの」
一瞬だけ、さゆりさんの表情が曇った。ウソをつかないといけなくて、罪悪感を覚えているのだろう。