喫茶リリィで癒しの時間を。
 
「はい、どうぞ」


「えっ? 頼んでませんけど……」


「これ、私からのサービスです」


 テーブルに置かれたのは、ごく一般的なショートケーキだった。


「またさゆりちゃん、そんなことして!」


 鈴木のおっさんは懲りずに茶々をいれる。他の二人から「まあまあ」となだめられ、再びおとなしくなった。


「ハンカチまでもらって、ケーキまで……申し訳ないです」


「いいんですよ。私が勝手におせっかいを焼いているだけですから。それより、ショートケーキって、なんだかご褒美って感じがしませんか?」


「ご褒美、ですか?」


 さゆりさんは笑顔で両手を合わせている。普通の仕草なのに、なぜか可愛らしく見える。
 いや、違うな。さゆりさんは何をしても素敵なんだろう。


「はい。だから、今日試合に頑張ったご褒美として召し上がって下さい」


「でも、俺は――」


「――後悔するような結果だったかもしれない。誰かに責められてしまうかもしれない。それでも、一生懸命、全力を出し切ったんですよね?」

 

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