喫茶リリィで癒しの時間を。
「コロッケ屋のおじちゃん、だよね。どうしたの?」
「八百屋んとこの嬢ちゃん、正直に答えてくれ。お前、学校の友達をいじめてるんか?」
「えっ……」
実可子ちゃんの表情が堅くなった。状況を察したのか、険しい顔でさゆりさんに目をやる。
「さゆりお姉ちゃん、このためにわたしを呼んだの?」
さゆりさんは、実可子ちゃんと目が合わせられないのか、うつむいていた。
「ごめんなさい、本当は、そうなの……」
「信じられない。まさか、話を聞き出すためにケーキまで用意したっていうの? 嘘つくなんて最低だよ!」
実可子ちゃんは両手でテーブルを叩くと、そのまま立ち上がって帰ろうとした。
最悪の展開だ。実可子ちゃんの中でさゆりさんの株が下がり、何も聞き出せないなんて。こんな状態で彼女を帰らせていいのだろうか。
“何かあったらフォローお願いしますね”
ふと、さゆりさんの言葉が頭をよぎった。
……そうだ、俺、フォローを頼まれていたんだ。
大好きな人にピンチが迫っている。
そして彼女は、他の誰でもなく、この俺に救いを求めている。
このまま何も行動しないまま終わったら……男がすたるってもんだ。