喫茶リリィで癒しの時間を。
ここにいる誰もがそう思ったのか、あの鈴木のおっさんまでもが、実可子ちゃんに反論できないでいた。
休憩室では八百屋のおばさんが待機しているけど、出てくる気配はない。
実可子ちゃんがいじめをしているということが明らかになったのに、どうしてだろう?
今出てきちゃうと余計にもめてしまうと思って、様子を見ているのだろうか。
いずれにしても、この雰囲気は非常にまずいと思う。何とかもう一度、ちゃんと話し合いができる状況にまで持っていきたい。
何かいいアイディアはないのかと考えていたとき――ふとこの前さゆりさんに言われた言葉を思い出した。
「なぁ、実可子ちゃん」
「……なに?」
実可子ちゃんは、泣いてはいないけれど、完全に心を閉ざしているようだった。
カウンター席に戻ることもなく、立ち尽くしたままうつむいている。