喫茶リリィで癒しの時間を。

「どうしてさゆりさんやおっさんたちが、実可子ちゃんに厳しいことを言うのかわかるか?」


「そんなの、わかるわけないじゃん」


「だったら教えてやる。実可子ちゃんのことを大切に想っているから、素直でまっすぐな心を持ってるって信じてるからだよ。間違った道を進んでほしくないからだよ」


「……え?」


 実可子ちゃんは顔をあげて、俺の目をまっすぐに見つめた。


「もしかしたら嫌われるかもしれない、反発されるかもしれない。そういうの覚悟して、心を鬼にして注意すんだよ。こんな面倒で疲れるようなこと、どうでもいいヤツにはしないだろ?」 


 これは、俺自身も今気がついたことだ。ようやくあのときの、さゆりさんの言葉の意味がわかった。


 友達と一緒にバカなことして騒いで、楽しむのは簡単。友達が間違ったことをしそうになっても、見て見ぬふりをするのは簡単だ。


 でも、俺の友達は、俺が“サボりたい”ってぼやいた言葉をスルーせずに、間違っていると教えてくれた。ケンカになるかもしれないってリスクがあっても、些細なことでも、ちゃんと正してくれた。


 


 

 
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