喫茶リリィで癒しの時間を。
俺は実可子ちゃんの隣に座って、覗き込むように目を合わせた。
「……あとさ、話を聞いて思ったんだけど、実可子ちゃんたちは、その子のことが嫌いってわけじゃないと思うんだ。ただ、うらやましかっただけなんじゃない?」
「うらやましい?」
「うん、俺にはそう聞こえたよ」
「そうなのかな。もしかしたら、そうなのかもしれない……」
背後から、椅子の引く音が聞こえた。たぶん、ジジィトリオのだれかがこっちに来ようとしている。
お願いだから、鈴木のおっさんだけはやめてほしい。
「隣の芝生は青く見えるといいますよね。他人が持っているものは、なんでもよく見えるものですよ」
俺たちの傍にやってきたのは、石川さんだった。爆弾がこなくてよかったと胸をなでおろす。
「例えば私は、八百屋さんの娘としてうまれた実可子ちゃんのこと、うらやましく思いますよ」
「えっ、わたしを?」