喫茶リリィで癒しの時間を。
「はい。だって、いつでも新鮮でおいしい野菜や果物が食べられるでしょう? 誰よりも健康になれそうです」
「それは、たしかにそうかも」と実可子ちゃんはか弱く笑う。
ふたたび、椅子を引く音がした。後ろを振り向くと、にこにこ顔の溝口さんが立ち上がっていた。鈴木のおっさんじゃなくてよかったと、またほっとする。
どんだけおっさんにビビってんだ。
「僕は、石川さんが羨ましいなあ」
「私ですか?」
「うん、だって、同い年なのにまだ髪の毛がふさふさだもの」
溝口さんは、つるつるの頭を撫でながら話している。
石川さんの髪は白髪混じりだけどふさふさで、いつもきれいに整えている。一方で溝口さんは……整える毛すら残っていない。
「ちょっと、そんなデリケートな話題ぶっこんで来ないでくださいよ」
思わずつっこむと、溝口さんはえへへと可愛く笑っていた。まちがいない。この人は、さゆりさんに次ぐ癒し系だと確信した。
実可子ちゃんはハゲネタが面白かったのか、さっきよりも明るく笑っていた。
「……さゆりお姉ちゃんも、誰かをうらやましいって思うことあるの?」
「私ももちろんあるわ。実可子ちゃんのことはいつもうらやましく思っているわよ」