喫茶リリィで癒しの時間を。
「わたしを? どうして? お姉ちゃんも野菜が食べたいの?」
「それも魅力的ですが、違いますよ。私がうらやましいと思っているのは、実可子ちゃんにはやさしいお父さんと明るくて寛大なお母さんがいるということです。私には今、どちらもいないから。それに、お二人の血を受け継ぎ、明るくてまっすぐで、いつも堂々としている実可子ちゃんに憧れてもいるわ」
「わたしも、さゆりお姉ちゃんにずっと憧れてるよ! とっても美人でスタイルがよくて、おいしい料理が作れて……お姉ちゃんみたいになりたいって思ってる」
さゆりさんは「ありがとう」とつぶやくと、実可子ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
「さっきは、ひどいことをいってごめんなさい……」
実可子ちゃんは、さゆりさんの腕の中で、何度も謝っていた。
――実可子ちゃんが泣き止むんだのを確認して、さゆりさんは彼女から離れた。
「今まで、あの子のこと、ただ“ムカつく”って思ってたけど、違うんだってわかった。可愛くて、お姫様みたいなあの子がうらやましかったんだ。そんな勝手な理由でいじめるなんて、よくなかったね」