らずべり味〔徒然日記〕
そして約束の日、少し風邪気味だったけど、迎えの彼の車に乗った。



「好きな場所があるから、そこでいい?」



場所は言わずに、車は走りだす。





二時間半で着いたのは、海だった。



でも砂浜を散歩するような所ではなく、フェリーが発着するような港。



食事やショッピングをする所もあるが、やはり私の趣味とは合わない。




「少し座ろうか」



と彼に案内されたのは、寒風吹き荒れるベンチ。



寒くて寒くて、風邪が悪化しそうだった。



とにかく帰りたくなった。


しばらく話し、ようやく車に乗り込むと、咳がとまらない。


体も熱っぽい。




「大丈夫?」


とは言ってくれるものの、彼のおしゃべりは止まらない。



「夕食食べて行こうか」と言われた時、私の心は決まった。



「今日はこのまま帰らせて」


と言って、次の約束を求めてくる声をさらりと流して家に入った。




もう、ダメだ。



部屋に座り込むと、彼から電話だと母が呼びにきた。




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