らずべり味〔徒然日記〕
玄関を開けると、さっき帰ったはずの彼の車がとまってる。



「ちょっと乗ってくれる?話しがあるから。」



そう言われて助手席へ。



車内には、女性歌手の優しいバラードが流れてた。



「俺… 駆け引きとか出来ないし。 らずちゃんの事、真剣だから。ちゃんと考えたいと思ってる。」




はぁ… この人酔ってるよ。 
このシチュエーションに。




確かに、私の事を気に入ってくれてるのは分かる。



でも、私の気持ちは全く分かってくれてない。



朝から風邪気味だと言っていた私を、海に連れて行き、寒風の中に座らせる。



更に、しんどそうな状態なのに食事に誘う。



どれくらい私の事を見てくれてるのか、気づいてくれるのか。




彼の言葉や行動を思い出しても、私が嬉しくなるものは、ほとんどなかった。





「気持ちは、分かりました。」



そのまま連れ去られても困るので、その場は穏やかに微笑み、車を降りた。





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