なだねこ
この世でいちばんやさしいねこ
なだねことおばあさん
あるさびれた村に、ひとりのおばあさんが住んでおりました。おばあさんは、毎日山の中に分け入って、山菜やキノコを採ってきて、それを売って暮らしていました。
ある日、いつもキノコを採る木の下に、親子のねこがいるのを見つけました。親ねこは、横たわったままぴくりとも動きません。子ねこは、血だまりの中でみゃあみゃあと鳴きながら、冷たくなった親ねこのからだをなめておりました。密猟者たちの声が聞こえてきます。親ねこの周りには、いくつものきらきらと輝く真珠のように美しい玉が落ちておりました。
(これは、うわさに聞く「なだねこ」にちがいない……かわいそうに)
「なだねこ(涙猫)」とは、世にも珍しい、宝石となる涙を流すねこのことです。このままでは、生き残った子ねこも殺されてしまいます。
おばあさんは、たましいを失った親ねこを抱き、宝石を土の中に埋めて、子ねこはたいせつにふところに入れてから、そっとその場を立ち去りました。
家に着くと、おばあさんは庭に親ねこを埋めてやりました。子ねこはじっとその様子を見ていましたが、やがてみゃあ、と一声鳴きました。とたんに、様々に色とりどりの光を放つ宝石が、そのすみれ色の瞳からぽろぽろとこぼれ落ちました。
おばあさんは、あわてて子ねこを抱きしめて、やさしく諭すのでした。
「おまえは、なだねこ。とてもやさしいねこだから、この世でもっともきれいな涙を流すのだよ。でも、悪い人間がそれを見たら、おまえのお母さんのようになってしまうよ。だから、泣くのはおやめ。絶対に泣いてはいけないよ」
子ねこは、わかった、というように鳴くのをやめて、おばあさんの着物にほおとしっぽをこすりつけました。
ねこは、瞬く間に大きくなりました。そのうつくしさは評判になりましたが、だれもこのねこが「なだねこ」だとは気が付きませんでした。それは、ねこがいつでも人懐こく、甘えるように笑うねこだったからです。
ある日、いつもキノコを採る木の下に、親子のねこがいるのを見つけました。親ねこは、横たわったままぴくりとも動きません。子ねこは、血だまりの中でみゃあみゃあと鳴きながら、冷たくなった親ねこのからだをなめておりました。密猟者たちの声が聞こえてきます。親ねこの周りには、いくつものきらきらと輝く真珠のように美しい玉が落ちておりました。
(これは、うわさに聞く「なだねこ」にちがいない……かわいそうに)
「なだねこ(涙猫)」とは、世にも珍しい、宝石となる涙を流すねこのことです。このままでは、生き残った子ねこも殺されてしまいます。
おばあさんは、たましいを失った親ねこを抱き、宝石を土の中に埋めて、子ねこはたいせつにふところに入れてから、そっとその場を立ち去りました。
家に着くと、おばあさんは庭に親ねこを埋めてやりました。子ねこはじっとその様子を見ていましたが、やがてみゃあ、と一声鳴きました。とたんに、様々に色とりどりの光を放つ宝石が、そのすみれ色の瞳からぽろぽろとこぼれ落ちました。
おばあさんは、あわてて子ねこを抱きしめて、やさしく諭すのでした。
「おまえは、なだねこ。とてもやさしいねこだから、この世でもっともきれいな涙を流すのだよ。でも、悪い人間がそれを見たら、おまえのお母さんのようになってしまうよ。だから、泣くのはおやめ。絶対に泣いてはいけないよ」
子ねこは、わかった、というように鳴くのをやめて、おばあさんの着物にほおとしっぽをこすりつけました。
ねこは、瞬く間に大きくなりました。そのうつくしさは評判になりましたが、だれもこのねこが「なだねこ」だとは気が付きませんでした。それは、ねこがいつでも人懐こく、甘えるように笑うねこだったからです。
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