年下属性はありません!
なんとか俊明君をなだめすかして,小学生コースを終えた。

ほんと,塾っていうか,託児所だな・・・

ここからは,中学生コースになるので,みんな大人でたいぶ楽になる。

受験というプレッシャーはあるけれど。

特にこれからやる基礎コースはあまり授業についていけていない子が対象だ。

頑張って教えないと。

小学生が帰ると,入れ替わりで続々と中学生達が入ってくる。(うちの塾は小中学生が中心で,高校生は数人しかいない。)

授業のある子は授業ブースに,自習に来た子は自習室に入っていく。

教室には自習スペースがあって,授業がない生徒も自由に勉強をすることができるのだ。

夕方のこの時間になると,自習室も中学生で賑わってくる。

講師の先生にも軽く挨拶をして,開始時間になったら授業を始める。

今日は因数分解だ。

説明をしていると,一人上の空の子がいた。あきらかにこちらの見ておらず,自習室の方を見ている。

「美樹ちゃん,ここ分かる?」

「あ!すみません!」

美樹ちゃんはストレートな黒髪を長くのばしたの美少女だが,少しメルヘンチックというかなんというか。

一言で言うと恋しているのだ。勉強が手に付かないくらい。お相手は和也君という男の子。

思春期の女子特有の男子への冷たい態度をとってはいるが,わざわざ和也君にいつも絡みに行っているあたり,ばればれである。

和也君は美樹ちゃんの同級生。スポーツマンで,よく喋る人気者だ。男女ともに友達が多い。

外見が取り立てて美少年というわけではないが悪くもなく,勉強もスポーツもできて,クラスの中心的な人物のため,きっと女の子にモテるのだろう。

塾でも,和也君が自習室にいれば,女の子が和也君の周りに集まって勉強を教えてもらっていたり,痴話喧嘩してたりするのをよく見る。

「和也君はいつもモテモテだねぇ」なんておばさん丸出しでコメントすると「そんなんじゃないっすよ」とは言っているが,さすがに本人も自分がモテることに気づいているだろう。
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