年下属性はありません!
和也君は自習室に入ると,乱暴に座って教科書を出して勉強を始める。

今日は授業がないのは確認したから,もっぱら自主勉強だ。

頑張れ頑張れ,集中してやるんだよ。

小学生の授業が終わると,次のコマは空いている。

今のうちに様々な雑用をやってしまおうと,講師机についたとき人の気配を感じた。

「先生」

声をかけられて,目線を上げると和也君が立っていた。

「進路のことで,ちょっと相談したいことがあるんですけど。」

あー,進路ね,確かに中3だし,大事だね。

体温が上がって変な汗が出る。

「高山先生じゃ,だめかな?」

「木村先生に相談したいんですが」

進路相談は仕事の一つだ。

もちろん断ることなんてできないし,断る理由もない。

先日告白されたから,もう進路相談には一切乗らないなんて通用するわけがない。

「じゃあ,そこの相談ブースで話そうか。」

ただパーティションで区切られているだけの空間であるが,耳をすまして聞かない限り話している内容は,他のブースには聞こえない。

パーティションの上半分は透明なので,外からは丸見えではあるが。

逆に考えれば,丸見えということは,変なことは起こらないということで,私にとっては安心要素だ。

頭の中を昨日ニュースで見た「容疑者」「未成年」「懲役」といった言葉がよぎる。

落ち着け,冷静に。

ただの進路相談だ。
< 22 / 111 >

この作品をシェア

pagetop