年下属性はありません!
小学生コースが終わると,美樹ちゃんが一番にブースに入ってきた。

まだ次の授業が始まるまで10分程度あるので,美樹ちゃん以外の生徒はいない。

「先生!宿題できたよ!答え合わせしてー!」

「美樹ちゃん,えらいじゃん!お!全部正解だよ~!」

美樹ちゃんは普段あまり宿題をやってきてくれない子なのに珍しい!

「ふふーん,カズに教えてもらったからね~」

うん,知ってる。

カズとは和也君のことだ。

「そうなんだ,和也君,優秀だからねぇ。二人仲いいね」

素知らぬ顔で,話を合わせる。

「うん,和とは中1のときから友達なんだ。頭いいし,スポーツできるし,優しいし。」

はいはい,そうだねぇ。

「今度告白しようと思う」

えっ

「和は女の子にもてるけど,誰にも譲りたくない。先生も応援してくれるでしょ?」

「わ,私には何もできないけど。でも,うまくいくといいね」

「うん,邪魔しないでね」

それだけ言って,美樹ちゃんはまたブースの外に出ていって和也君のところに戻っていった。

邪魔するなってどういうこと!?宣戦布告?牽制?

どこまで知ってんの!?

美樹ちゃんを目で追いかける。耳をすませて和也君との会話を聞き取る。

授業ブース内が静かであれば,外の会話もなんとか聞き取れる。

「和ー」

「なんだよ,今度は何?」

「和に教えてもらったところ,全部正解だったよ。たまにはやるじゃん!」

「たまにはじゃねーよ。あれくらい余裕だっつーの」

「あ,和のこの消しゴムなに!?かわいー」

「お前取るなって!」

「私も同じヤツ買おうかな。どこに売ってたの?」

「そこの大通りを高速の方に行ったところにあるでかい本屋」

あー,楽しそうだな。

うまくいくといいね

その言葉に嘘はない。

和也君も彼女ができて,私のことは忘れてくれたら,きっとそれはみんなにとってハッピーエンドだ。

だけど,なんだか心がもやもやする。

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